第3回講演会 弘法大師筆の書についてー「崔子玉座右銘」を中心に-

 

 

会期:平成26年2月5日(水)
場所:根津美術館 講堂

講師:名児耶 明氏
五島美術館 学芸部長
東京藝術大学講師
東京学芸大学講師

益田鈍翁が弘法大師筆「崔子玉座右銘」断簡を披露するために催された大師会茶会は、本年で百回目を迎えます。これを機に、今回は古筆学・日本書道史を専門とされる名児耶明氏をお迎えし、弘法大師の書についてご講演頂きました。

弘法大師(空海)は奈良時代後期に生まれ平安時代初期に活躍しました。この講演会では遡って奈良時代の書から説明が始まりました。はじめは中国から篆書・隷書が伝わり、やがて楷書・草書も伝えられ、そこから仮名が生まれたこと、王羲之の書が日本に伝わり平安時代初期の弘法大師・橘逸勢・嵯峨天皇に影響を与えたことなどを、資料を比較しながら説明されました。

美しい書を書く人物は大勢いたが、弘法大師は中国から色々な種類の筆を持ち帰り、書き方により使い分けることが出来たそうで、「弘法筆を択ばず」という有名な言葉と意味がずれます。そこには、与えられた筆にあわせて書体を自在に選ぶことができるといったように、その意味は奥が深いのではないかというお話でした。

最後に、「崔子玉座右銘」(崔子玉の戒めの言葉)は100文字の大字が見事な装飾性を持った草書で書かれており、この時代では弘法大師しかこのような草書を書ける人物がいなかったのではないかと説明されました。

*大師会所蔵16文字